読了記録以下は、上巻を読んだ者が各章の内容をまとめた記録です。魔物の正体や帝国の異変について、本書だけでは分からない部分も残されています。
今から約三百年前。帝国各地では魔物の出現が急増していたと書かれている。街道を使う商人が減り、畑や小さな集落まで襲われるようになっていたらしい。
同じ頃、帝国は魔物討伐と国防を理由に税を引き上げている。十分な説明はなく、税を納められない者が町を追われる事例も増えていたようだ。
物語の中心となるのは、タヌキ族のルズーネスであるイイデンと、その友人である。友人の名前は本書の中で明かされていない。二人は町の近くに現れた魔物を退け、負傷した住民を助けていたと記されている。
しかし魔物が増えた時期と、ルズーネスの姿を見かけるようになった時期が重なったことで、町では不穏な噂が広がっていたらしい。「魔物を呼び寄せているのはルズーネスではないか」と疑う者も現れている。
討伐した魔物のそばには、行方不明になった住民のものによく似た護符が落ちていたと書かれている。ただし持ち主や魔物との関係については、この章では明らかにされていない。
二人は魔物の増加と帝国の異変を確かめるため、町の外へ目を向け始めたようだ。
魔物はルズーネスが生み出している。その噂は旅人や商人によって各地へ広がり、いつしか事実のように扱われるようになったと書かれている。
イイデンたちは宿への立ち入りを断られ、町を歩くだけで住民から警戒されたらしい。魔物を倒しても感謝されるとは限らず、助けた相手から恐れられることもあったようだ。
それでもイイデンは、自分たちを疑った者まで救い続けている。困っている者を見捨てられない性格であり、誰かに認められるためではなく、それが正しいと思うから剣を振るっていたと記されている。
そんな中、北の地に魔物を率いる「魔王」が現れたという知らせが届く。帝国が派遣した討伐隊は何度も敗れ、街道や集落の被害はさらに広がっていたらしい。
イイデンは魔王を倒せば、ルズーネスも人々を守れる存在だと証明できると考えたようだ。友人はその考えが正しいか迷いながらも、彼を一人では行かせなかった。
二人は古い地図とわずかな旅支度を持ち、故郷を出たと書かれている。
旅立ちの際、イイデンは「いつか誰もが種族を気にせず、隣を歩けるようにしたい」と語ったらしい。魔王討伐の旅は、ルズーネスへの信頼を取り戻す旅でもあったようだ。
イイデンたちが訪れた山間の交易町では、荷馬車が魔物に襲われる事件が続いていたと書かれている。
町の者たちは、付近で目撃されていた白鳥族のルズーネスを疑っていた。その人物がアーヤという剣士である。
アーヤは内気で口数が少なく、疑いをかけられてもうまく弁明できなかったらしい。一人で魔物の足跡を調べていたことも、襲撃の準備をしていた証拠だと誤解されていたようだ。
しかし魔物が再び町を襲った際、アーヤは逃げ遅れた子どもをかばって戦っている。自分を疑った住民を見捨てず、魔物の前に立ち続けたと記されている。
イイデンたちは彼女に加勢し、三人で魔物の群れを退けた。その後、魔物が現れた方向を調べると、使われなくなった古い坑道へたどり着いたらしい。坑道には何者かが出入りした形跡があったものの、それが魔物の増加と関係しているかは分からなかったようだ。
町を救ってもアーヤへの疑いが完全に消えることはなかった。居場所を失った彼女に、イイデンは共に魔王を倒しに行こうと声をかけている。
アーヤはしばらく迷った末、その手を取ったと書かれている。こうして二人の旅に、白い翼を持つ剣士が加わった。
北へ向かう三人は、吹雪と魔物の被害に苦しむ集落へ立ち寄ったと書かれている。
そこでは病も流行しており、薬や食料が不足していたらしい。住民の治療を続けていたのが、ホッキョクキツネ族のルズーネスであるミオナだった。
ミオナは身分や種族を問わず患者を受け入れ、治療費も求めなかったと記されている。かつて自分を遠ざけた者まで分け隔てなく救ったことから、集落では「聖女」と呼ばれていたようだ。
イイデンとアーヤは集落を魔物から守り、名の記されていない友人はミオナの治療を手伝っている。二人は傷薬や薬草について語るうちに、少しずつ親しくなったらしい。
本書には、ミオナが友人の傷に気づき、黙って治療する場面も書かれている。その後は休息のたびに薬草茶を用意し、隣に座ることが増えていったようだ。友人も彼女のことを目で追うようになったと読み取れる。
ミオナは一部の魔物から不自然な魔力を感じていたらしい。しかし何を意味するのかは分からず、魔物の正体についても結論は記されていない。
集落を救ったあと、ミオナは被害の原因を確かめたいと申し出た。彼女を迎えたことで、魔王討伐を目指す一行は四人になったと書かれている。
各地で魔物を退けた四人の評判は、やがて帝都まで届いたと書かれている。
一行は第五代皇帝から城へ招かれた。謁見の場では、ルズーネスである四人を警戒する貴族も少なくなかったらしい。
皇帝は拡大する魔物の被害を止めるため、イイデンに魔王討伐を命じている。その際、帝国を代表して戦う者として「勇者」の称号を与えたと記されている。
イイデンは自分だけが評価されることを望まず、共に旅をしてきた仲間も帝国の守り手として認めてほしいと申し出たようだ。皇帝はそれを受け入れ、四人全員に魔王討伐の役目を託している。
ルズーネスが皇帝の前で正式に認められたことは、当時としては異例だったらしい。城の外には彼らを応援する者が集まり、迫害されていたルズーネスからも期待が寄せられたと書かれている。
謁見には年老いた宰相も同席していたようだ。宰相はほとんど言葉を発さず、北へ向かう古い道を示しただけだと記されている。
帝都を出る前夜、四人は必ず全員で戻ると誓い合ったらしい。ミオナは友人に小さな護符を渡し、帰ってきたら返してほしいと告げている。
四人は帝国の希望を背負い、魔王の居城へ向かった。
北の果てにある居城で、勇者一行はついに魔王と対峙したと書かれている。
魔王は巨大な身体と獣のような姿を持ち、多くの魔物を従えていたらしい。一行は激しい攻撃を受けながらも、互いを支え合って戦い続けた。
アーヤは前線で魔物を食い止め、ミオナは傷ついた仲間を治療した。名の記されていない友人は魔法で退路を作り、イイデンを魔王のもとへ送り届けたようだ。
戦いの中で、魔王は何かを伝えようとしたとも書かれている。しかし言葉は途切れており、その意味を四人が理解することはできなかったらしい。魔物の増加や帝国各地の異変との関係も、この時点では分からないままになっている。
最後はイイデンが仲間の力を受け、魔王を討ち倒したと記されている。魔王が倒れると周辺にいた魔物は散り、各地で続いていた襲撃も次第に減っていったようだ。
帝都へ戻った四人は、大勢の民から英雄として迎えられた。ルズーネスへの偏見もすぐに消えたわけではないものの、彼らを恐れるのではなく、同じ帝国の民として見ようとする者が増え始めたと書かれている。
凱旋の夜、友人はミオナから預かった護符を返そうとしたらしい。だがミオナは、そのまま持っていてほしいと答えている。二人はこの頃には互いを特別な存在として想っていたようだ。
イイデンが望んだ「種族を気にせず隣を歩ける世界」は、まだ遠い。それでも最初の一歩は確かに踏み出された。
四人が並んで帝都の大通りを歩く場面で、上巻は幕を閉じている。