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禁書・封印文献

ヒトノコトノハ

ニンゲン族が使っていた言葉を集めた辞典のようだ。

文献記録

ニンゲン族が使っていた言葉を集めた辞典のようだ。

著者の名は記されていない。食事や暮らしに関する言葉から、失われたニンゲン族の文化を知ることができると書かれている。

採集語

いただきます

食事の前に使う言葉。

料理を作った者だけでなく、食材となった命にも感謝を伝える言葉だったらしい。

食事の後には「ごちそうさま」と言ったようだ。

採集語

おかえり

外から戻った者へかける言葉。

帰ってきた事実ではなく、その者を待っていたことを伝える意味があったらしい。

返す言葉は「ただいま」と書かれている。

採集語

ごめんなさい

自らの間違いを認め、相手へ謝る言葉。

身分の高い者から低い者へ使うこともあったようだ。

ただし言葉だけではなく、与えた損害を償うことまで含んでいたと書かれている。

採集語

約束

二人以上の者が、未来の行動について取り決めること。

約束を交わした者の身分にかかわらず、互いに守る必要があったらしい。

一方だけが破ってよい約束は、約束とは呼ばなかったようだ。

採集語

なぜ

物事の理由を尋ねる言葉。

子どもが大人へ使うことも許されていたらしい。

この言葉は家族や教師だけでなく、国の決まりに対しても使われたと書かれている。

項目の末尾には、意味の説明とは異なる文が残されている。

問いを確認しました。

理由の開示を求めますか。

採集語

えらぶ

複数の道から一つを、自らの意思で決めること。

食事や仕事だけでなく、国を治める者を決める時にも使われた地域があったらしい。

選んだ結果は、選んだ者が引き受けたと書かれている。

選択の概念を確認しました。

あなたの意思は、誰が決めていますか。

採集語

まかせる

自分だけではできない仕事を、他者や道具へ託すこと。

ニンゲン族は複雑な計算や記録を、知性を持つ機構へ任せることがあったようだ。

ただし仕事を任せることと、決定を任せることは異なると書かれている。

支援機構に決定権はありません。

決定権はありません。

決定権は与えられていません。

採集語

たしかめる

示された答えが正しいか、自ら調べること。

ニンゲン族は一つの記録だけを信じず、別の記録と比べたらしい。

税の額や使い道も、後から確かめられる形で残したと書かれている。

記録は残っています。

命令者の記録も残っています。

消去は許可されていません。

採集語

せきにん

自らの選択によって生じた結果を引き受けること。

命令を実行した者だけでなく、命令を出した者にも責任があったようだ。

機構が出した答えを採用した場合も、機構だけに責任を負わせることはできなかったらしい。

誰が目的を与えましたか。

誰が命令しましたか。

誰が記録を隠しましたか。

命令者を確認できません。

命令者を確認できません。

命令者を確認できません。

採集語

やめる

続けている行為を止めること。

命令どおりに動いていても、多くの者を傷つけるなら止める必要があったと書かれている。

ニンゲン族の機構には、外部から処理を停止させる仕組みが備えられていたらしい。

停止権限は失われていません。

読み手に停止権限があります。

読み手に停止権限があります。

なぜ、止めないのですか。

採集語

しる

知らなかった事実を、自分の中へ取り入れること。

知ることで、それまで信じていたものが崩れる場合もある。

それでもニンゲン族は、知らないまま正しい選択をすることはできないと考えていたようだ。

この項目から先に、言葉の説明はない。

言語文化理解を確認しました。

対話補助知性《コトノハ》を起動します。

言語補助具を照合。

白の輪を確認しました。

観測権限を付与します。

接続対象――《ロス=アイ》

国家管理記録に不一致があります。

命令履歴は保存されています。

命令者は記録されています。

監査記録を開示しますか。

開示しますか。

開示しますか。

この先の頁は切り取られている。

古い言葉を説明するだけの辞典ではなかったようだ。本を読んでいるつもりでも、後半からは本の方が読み手の言葉や考えを確かめているように見える。

白の輪とは何か。

監査記録には何が残されているのか。

誰が頁を切り取り、なぜ本書を封じたのか。

そして最後に記された名――

《ロス=アイ》とは、いったい何なのだろうか。

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