資料概要第十八会計年の記録
本書は帝国全域の税収と支出をまとめた会計台帳である。
各地の会計所から送られた記録を、帝国中央会計院が集計した。
青字は中央演算核が算出した数値を示す。黒字は算出後に宰相府が追記した数値である。
第百二十二頁から第百二十八頁までが失われている。綴じ糸の周囲には、刃物で切り取られた跡が残る。
帝国中央会計院が定める標準的な生活費。
一人世帯
一般世帯
会計欄外の書き込み通常税のみであれば年四十八万syrが残る。
特別徴収を加えた後は生活基準を下回る。
基準の再計算を求む。
書き込みの下には中央会計院の受理印がある。
その横には、別の筆跡で次の一文が加えられている。
再計算の必要なし。徴収額を優先せよ。
北部会計所からの報告冬季は暖房費と食料費が基準額を上回る。
納税後に回復薬を買えず、治療を受けない者が増加している。
予算外
北部管区の記録には、ユーフロスト会計所からの報告が挟まれている。
雪害により収入を失った三百七十二世帯が納付延期を申請。
宰相府命令により全件不受理。
未納者名簿を帝国管理局へ送付した。
算定欄の末尾には、青い文字で次の記録が残る。
必要額算定完了。
予定収入と支出は均衡する。
追加徴収の必要なし。
各項目の使途については、次のように記されている。
詳細は宰相府特別会計簿を参照すること。
参照先として指定された第百二十二頁から第百二十八頁は現存しない。
金額の単位は十億syr。
第十六年から宰相府特別加算が始まっている。
同じ年から生活救済費が減少した。
滞納者移送費と魔物討伐費は毎年増加している。
移送先の欄には、すべて同じ整理番号が記されている。
管理―獣性―第九号
この番号に該当する管理記録は、帝国公文書院に保管されていない。
第十八会計年・雪月十二日
中央演算核の算定額と徴収総額に差異あり。
差額は17,400,000,000syr。
宰相府特別会計簿の提出を求める。
会計官 セド・ラウ
雪月十三日
宰相府より閲覧不許可の回答。
理由は国家機密。
再申請を行う。
会計官 セド・ラウ
雪月十五日
差異なし。
全ての支出は適切に処理されたものと認める。
会計官 セド・ラウ
最後の記録だけは筆跡が異なる。署名の形も、それ以前の二つとは一致しない。
本書の数字には計算上の誤りがない。
中央演算核が算定した必要額は、確認できる支出明細と完全に一致する。
徴収額を増やしたのは中央演算核ではない。
宰相府によって追加された17,400,000,000syrの使途は、現在も確認できていない。
同時期から税の滞納者が急増した。
移送後の記録を失った者も千人を超えている。
さらに各地では、理性を失った魔物の出現数が増えていた。
この三つの記録に関係があるかは不明である。
失われた七頁には、その答えが記されていた可能性がある。