くろとしろ
むかしむかし。
かき氷帝国が、まだ小さな国だったころのお話です。
帝国には二人のクマの騎士がいました。
焦げ茶色の毛を持つヒグマのクロ。
雪のように白い毛を持つシロクマのシロ。
二人は幼いころからの友だちでした。
クロは大きな剣を持っていました。
どれほど硬い岩でも、ひと振りで真っ二つにします。
「敵を倒せば、みんなを守れる」
クロはそう考えていました。
シロは大きな盾を持っていました。
どれほど強い攻撃を受けても、決して後ろへ下がりません。
「誰も傷つかなければ、それでいい」
シロはそう考えていました。
ある夜。
北の山から大きな魔物が現れました。
魔物は城門を壊し、町へ入ろうとします。
クロは大剣を構えて飛び出しました。
けれどクロが攻撃を避ければ、魔物の爪は後ろにいる人々へ届いてしまいます。
クロは逃げることができません。
そこへシロが駆けつけました。
シロはクロと魔物の間に立ち、大きな盾を地面へ突き立てます。
「クロ。前だけを見ろ」
シロは言いました。
「お前の背中は、私が守る」
魔物の爪が盾へ振り下ろされました。
大きな音が町中に響きます。
それでもシロは動きません。
「シロ。そこを動くなよ」
クロは大剣を握り直しました。
「必ずここへ戻る」
シロの盾が魔物の攻撃を受け止めます。
その陰からクロが飛び出しました。
振り下ろされた大剣は、魔物の角を打ち砕きました。
魔物は驚き、北の山へ逃げていきました。
戦いが終わると、皇帝は二人に尋ねました。
「この国を救ったのは、どちらだ?」
クロはシロを指さしました。
「シロです。シロの盾がなければ、俺は剣を振れませんでした」
シロはクロを指さしました。
「クロです。私の盾だけでは、魔物を追い払えませんでした」
皇帝は笑いました。
「ならば、この国を救ったのは二人だ」
皇帝はクロを《帝国の剣》と呼びました。
シロを《帝国の盾》と呼びました。
クロは剣を掲げて誓いました。
「この剣は、誰かを守るために振るう」
シロは盾を掲げて誓いました。
「この盾は、誰かが前へ進むために掲げる」
それから二つの一族は、代々騎士団を率いる役目を受け継ぎました。
ヒグマの騎士は大剣を持ち、帝国の敵と戦います。
シロクマの騎士は大盾を持ち、人々の前に立ちます。
帝国の子どもたちは今でも大人に尋ねます。
「剣と盾は、どちらが強いの?」
大人たちは決まってこう答えます。
「二つが並んだ時に、一番強くなるんだよ」